検査の開発データと特徴​AILSエーアイエルエス®〜

AILSエーアイエルエス®とは

AILSエーアイエルエス®は、10 年以内に脳卒中・心筋梗塞を発症するリスクを評価するAILS(脳心疾患リスク)、4年以内に糖尿病を発症するリスクを評価するAILS(糖尿病リスク)、大切な栄養素である必須・準必須アミノ酸が現在血漿中で低下していないかを評価するAILS(アミノ酸レベル)と、現在認知機能が低下している可能性を評価し、生活習慣等の改善につなげるAILS(認知機能低下)の4 種類の評価項目で構成される検査です。

AILS(脳心疾患リスク)評価式の開発概要

AILS(脳心疾患リスク)式は、「ながはま0次予防コホート事業」で取得された、検査時点で脳卒中・心筋梗塞を発症していない4,039例の血漿中のアミノ酸濃度バランスの情報を用いて、その後の脳卒中・心筋梗塞発症を評価する式を多変量解析の手法を用いて作成しました。
「ながはま0次予防コホート事業」とは、京都大学大学院医学研究科と滋賀県長浜市が連携して実施する「市民の健康づくりの推進」と「医学の発展への貢献」を掲げた事業であり、この事業の柱が「0次健診」となっています(「ながはま0 次コホート」http://zeroji-cohort.com/)。「0 次健診」においては、市民1万人を目標に参加者を募り、健康情報、血液や尿の成分、環境・生活習慣の情報などを収集することを目的としています。


AILS(脳心疾患リスク)式から得られる値から、10 年以内の脳卒中・心筋梗塞発症に対して特異度が40 %となる値を5.0、特異度が95 %となる値を8.0とし、最小値が0.0、最大値が10.0になるように設定しています。また、AILS(脳心疾患リスク)に基づくランク評価として、AILS(脳心疾患リスク)値が5.0未満の場合を「ランクA」、5.0 以上8.0未満の場合を「ランクB」、8.0以上の場合を「ランクC」と設定しています。AILS(脳心疾患リスク)値が大きくなるほど、10年以内に脳卒中・心筋梗塞を発症するリスクが高くなります。

味の素株式会社共同研究プロジェクト 提供データ

AILS(糖尿病リスク)評価式の開発概要

三井記念病院総合健診センターの人間ドック受診者650例を導出用データ、215例を検証用データとして、血漿中アミノ酸濃度のバランスの情報を用いて内臓脂肪面積値に相関する式を作成しました。
Yamakado M, et al:Clinical Obesity 2(1 – 2):29 – 40(2012)

その式を、同施設の人間ドック受診者のうち、検査時点で糖尿病を発症していない7,703例に当てはめ、検査後4年以内の糖尿病発症評価が可能か検討を行い、AILS(糖尿病リスク)式として確定をしました。
山門實:人間ドック32(5):713-725(2018)

4年以内の糖尿病発症に対して特異度が40%となる値を5.0、特異度が80%となる値を8.0とし、最小値が0.0、最大値が10.0になるように設定しています。また、AILS(糖尿病リスク)に基づくランク評価として、AILS(糖尿病リスク)値が5.0未満の場合を「ランクA」、5.0以上8.0未満の場合を「ランクB」、8.0以上の場合を「ランクC」と設定しています。AILS(糖尿病リスク)値が大きくなるほど、4年以内に糖尿病を発症するリスクが高くなります。

AILS(認知機能低下)評価式の開発概要

新潟大学と味の素株式会社の共同研究にて全国13施設の協力体制のもと実施されたMCIコホート研究の成果がベースとなっております。
この研究から、軽度認知障害(MCI)の臨床診断を受けた方では血漿中のアミノ酸濃度バランスが崩れていることがわかりました。
特にヒトの体内で合成できず、食事から摂取する必要がある必須アミノ酸の濃度が低いことから、食事からのタンパク質摂取不足等がMCIに関係する可能性が示唆されました。これらの比較結果は数式に変換され、その数値を3つのランクに分類、ランクが上がるにつれて、実際に認知機能低下の可能性が高くなることも確認でき、MCIに対する新しい評価方法が開発されました。

AILS(認知機能低下)式は、認知症専門医を受診したMCIの方および複数の地域コホート研究に参加した認知機能が健常な方のうち、MCIの方120例および認知機能が健常な方120例を導出用データ、MCIの方99例および認知機能が健常な方100例を検証用データとして、導出されました。

AILS(認知機能低下)式から得られる値から、現在認知機能が低下している可能性に対して特異度が60%となる値を5.0、特異度が90%となる値を8.0とし、最小値が0.0、最大値が10.0になるように設定しています。また、
AILS(認知機能低下)に基づくランク評価として、AILS(認知機能低下)値が5.0未満の場合を「ランクA」、5.0以上8.0 未満の場合を「ランクB」、8.0以上の場合を「ランクC」と設定しています。AILS(認知機能低下)値が大きくなるほど、現在認知機能が低下している可能性が高くなります。

AILS(アミノ酸レベル)評価式の開発概要

7,685例の人間ドック受診者の各種臨床指標、生化学指標と血漿中の各アミノ酸濃度分布の情報を用いて評価式を導出しました。評価式は、血漿中アミノ酸濃度基準値の設定、アミノ酸濃度の偏差値化、AILS(アミノ酸レベル)の評価式導出という3つのプロセスを経て開発が行われました。
7,685例(男性4,694例、女性2,991例)の人間ドック受診者の中から日本人間ドック学会のガイドライン等に基づいた適合条件により1,890例( 男性901例、女性989例)の基準個体群を選びました。具体的には(1) 慢性疾患で定期的に薬物治療を受けている人、(2)検査診断上の異常レベル、貧血、炎症に該当する人を除外して基準個体を選出しました。さらに、個々のアミノ酸に対して、血漿中アミノ酸濃度が4SD( 標準偏差)以上高値あるいは低値である人を基準個体より除外して評価式算出用データとしました。
男性の必須・準必須アミノ酸濃度は女性よりも有意に高いものが多く、必須・準必須アミノ酸濃度には性差があることがわかっているため、基準値は性別ごとに設定しました。なお、アミノ酸濃度は必ずしも正規分布になっていないため、一般的な統計手法であるBox-Cox 変換を用いて正規分布に変換48)した後に、アミノ酸ごとに偏差値化しています。

山門實:人間ドック32(5):713-725(2018)

Yamamoto H, et al:Ann Clin Biochem 53:357 – 364(2016)
山本慶和,他:生物試料分析:34 (3):199 – 210(2011)
依田忠雄,他:健康医学:13(3):382 – 403(1998)

AILS(アミノ酸レベル)の偏差値分布

用いられるアミノ酸

AILS(アミノ酸レベル)の検査には、10種類の必須・準必須アミノ酸の血漿中濃度を用いています。10 種類の必須・準必須アミノ酸それぞれに対し、偏差値を算出します。偏差値は平均値が50となり、標準偏差が± 10という値に相当します。理論上、偏差値30 ~ 70の間に全体の約95%が分布することになります。

AILS(アミノ酸レベル)の分類方法

検査結果の分布

10 種類の必須・準必須アミノ酸濃度の偏差値のうち、最も少ないアミノ酸の偏差値がAILS( アミノ酸レベル)値になります。AILS( アミノ酸レベル)値が30.0以上は「通常」、30.0未満は「低い」と判断されます。AILS(アミノ酸レベル)値は0.0 ~ 100.0の数値となるように設定しています。

AILSエーアイエルエス®の各検査項目は以下の特徴があります

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AILSエーアイエルエス®検査結果とその見方