採用施設事例

事例

採用いただいている施設・自治体の事例をご紹介します。

東京都 三井記念病院

医療機関名 社会福祉法人 三井記念病院 総合健診センター
担当医師 山門 實 特別顧問
医療機関名 799例(平成23年9月~平成24年8月)
<内訳:男性494名(24歳~83歳 平均59歳±11歳) 女性305名(24歳~81歳 平均57歳±11歳)>
はじめに

三井記念病院では、平成23年9月からAICS®を人間ドックのオプション検査として導入しております。AICS®は、一回5mlの採血だけで、男性は4種、女性は5種のがんのリスクを評価できるというメリットがあり、新しいがん検診法として注目しています。
今回は平成23年9月~翌年8月までの1年間に当院にてAICS®をご受診頂いた方の結果を基に、AICS®の有用性について検討を行いました。

AICS®検査について

本院では、AICS®検査結果でランクCがついた方には、各がん種別の精密検査の受診をお勧めしています。胃がんは胃内視鏡検査、肺がんは胸部CT検査、大腸がんは大腸内視鏡検査、前立腺がんはPSA・前立腺超音波検査、乳がんはマンモグラフィー・超音波検査、子宮がん・卵巣がんは細胞診・超音波検査を実施しており、最近では前立腺がん、乳がん、子宮がん・卵巣がんの精密検査にはMRI検査の画像診断を加えています。

結果の考察と検証

三井記念病院での受診者799例のAICSの各がん種の判定結果は、グラフ1となります。
AICS®では、特異度95%のカットオフ値で陽性の方をランクCとしますので、各がん種のランクC率は5%となるはずですが、三井記念での受診結果は、肺、胃、前立腺で10%を超えた高い値になっており、これは、都市型の特徴として、地域性が表れているのではないかと考えています。全がん種のランクCの分布結果は、のべ8.7%で、この方々が精密検査の対象となります。

精密検査の結果は、肺81例中69例(85.2%受診率。以下同様)が胸部CTを受診され、肺腫瘍4例、その他炎症性の病変が32例となんらかの異常所見がみられました。発見された、肺腫瘍4例の中には肺肉芽腫があり、AICS®の良さを実感する発見例でありました。胃86例中65例(75.6%)が内視鏡検査を受診され、胃がん1例、その他病変が53例でした。大腸54例中33例(61.1%)が内視鏡検査を受診され、高度異型性1例を含む異常所見が24例ありましたが、がんは発見されていません。前立腺56例中45例(80.4%)が精密検査を受診され、前立腺がんが1例発見され、異常所見は13例でしたが、一方で異常なしは31例でした。乳腺は症例数が少ないのですが、9例中6例(66.7%)が精密検査を受診され、1例乳がんが発見されました。子宮卵巣は6例中2例(33.3%)が精密検査を受診されましたが、まだがんは発見されていません。

まとめますと、ランクCだった方のがん発見率は0.38%で、2011年度人間ドック全国集計成績報告の0.26%と比較して、若干高く、発見率でみた場合、スクリーニングとしての有用性があると考えています。また、その後本検討の後に実施されたAICS受診(平成24年9月~平成26年2月)の結果として、胃がん2例、大腸がん3例、乳がん1例、前立腺がん3例が発見されており、これらを踏まえまして、人間ドックで網羅的にがん検診を行うよりも、AICS®をスクリーニング検査として使用する有用性がある可能性があると考えています。

今後について

AICS®は上市してまだ3年であり、その有用性について、経過観察しているところです。AICS®は採血時のがんの可能性を評価していますが、今までに、ランクCだった方で精密検査でがんが見つからず、次年度で早期がんが発見された事例が2例、ランクAだった方が翌年度ランクCとなり胃がんが発見されたのが1例という事例が出ています。今後、ランクCでがんが見つからなかった方の相対的リスクも見ていきたいと考えています。

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山形県 北村山公立病院

医療機関名 北村山公立病院
担当医師 乳腺外科 鈴木 真彦 医師
医療機関名 83例(平成24年7月~平成25年9月)
はじめに

山形県北村山地域の乳癌検診の受診率は約20%と日本の他の地域に比べ決して低いわけではありませんが、少しでも受診率を高めたい、がんを早期に発見したいという思いから、北村山公立病院では、より簡便なスクリーニング法として、平成24年7月よりAICS®を健康診断のオプションとして、あるいは、単独のがんスクリーニング検査として導入しております。
今回は、乳癌スクリーニング検査としてのAICS®の有用性を実証することを目的として、AICS®による乳癌検出能に関する検討を行いました。

AICS®検査について

受診前に、受診者には、AICS®は血液を5mL採取するだけで乳がん(女性のみ)、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性のみ)のリスクが分かること、現在は乳癌検診の対象ではない20~30歳代の方でもリスクスクリーニングツールとして有用であること、腫瘍マーカーの血中濃度はがんが進行してから上昇することが多いのに対して、AICS®はがんの発症リスクが上昇した状態を評価できるため、より早期の段階でがんの発見につながることなどを説明しています。また、ランクCとなると、がんだと思い込んでしまう方もいますから、ランクCでも実際にがんがあるのは100人に1人程度であることを事前に説明しておくことも重要です。
AICS®でランクB、Cと評価された方は、がんを専門とする鈴木医師が診た後、該当する診療科で精密検査を受診してもらっています。

結果の考察と検証

2012年7月から2013年9月までの間に、当院にてAICS®検査を施行した83例中、ランクA は57例、ランクB は18例、ランクC は8例でした。そして、乳癌罹患確率が比較的高いとされるランクCの方8例中の1例において マンモグラフィー検査で悪性所見が指摘され、精査で乳癌の確定診断となり後日手術が施行されました。乳癌罹患確率が比較的低いとされるランクA、ランクBの方の中には乳癌の発見はありませんでした。

AICSの結果(n=83)
Rank Category Rank A Rank B Rank C
ランク者数    57   18    8

AICS Rank Category 別の MMG 所見
Rank Category      Rank A  Rank B  Rank C
悪性所見者数/ランク者数   0/57    0/18    1/8

発見された乳癌は、治癒的切除が可能なステージIIAで、AICS®がその段階での発見につながり本当に良かったと思っています。さらに発見が遅れたら、治癒が難しくなっていた可能性もあります。がんは早期発見、早期治療が原則ですが、怖い、面倒だという理由から、がん検診を受診しない方は多数おられます。しかし、血液検査だけで済むAICS®であれば受けてもよいという方は多いでしょう。

今後について

最近の研究によると、癌細胞から分泌される蛋白質 HMGB1 の作用により、正常細胞内の蛋白質がアミノ酸に分解され、その一部が血液中に漏れ出ることにより、血漿中アミノ酸濃度バランスが変動する一因になることが報告されています。
血漿中アミノ酸濃度を比較・解析することにより、各種癌の早期スクリーニングを行うAICS®は、乳癌発見の一助となる簡便なスクリーニング検査として期待できます。

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鳥取県 西伯病院

医療機関名 鳥取県南部町国民健康保険 西伯病院
担当医師 木村 修 院長
医療機関名 1,529例(平成24年1月~平成25年2月)
<内訳:当院受診例 912例、集団検診例 442例、町外症例 175例>
はじめに

全国の自治体で初めて、AICS®を住民検診に導入した事例となります。
西伯病院では、平成24年(2012年)1月より、鳥取県と南部町による検査受診費一部助成支援を受け[ⅰ]、鳥取県南部町住民に、がん検診の前検査としてAICS®を実施しています。
南部町の死亡原因の1位はがんであり、年間50名の方が亡くなっていますが、がん検診受診率は約30%と低迷していました。がん対策としてAICS®検査を開始した2012年以降、5%以上の受診増加がみられ(図1参照)、ランクCと評価されてのちの精密検査により、進行がん1例を含む6例で、がんが見つかっています。

     2010年  2012年  変化率  2013年  変化率
胃がん  31.3%  37.6%  +6.3%  38.7%  +7.4%
肺がん  29.1%  39.7%  +10.6%  39.5%  +10.4%
大腸がん 30.2%  36.9%  +6.7%  41.0%  +10.8%
(図1)鳥取県南部町 がん検診受診率の変化出典:鳥取県南部町健康福祉課

AICS®について

本検診では、各住民にAICS®の目的と意義を検査前に説明をした後、問診、同意を得て採血を行っています。採血は、西伯病院内、集団検診の2か所で実施し、いずれも検体処理は西伯病院で実施後、検査機関へ提出し、AICS®の検査結果を得ています。
がんである可能性が高いランクCの方に対しては、精密検査の受診を勧めています。胃がんでは胃内視鏡検査、肺がんでは胸部CT検査、大腸がんでは全大腸内視鏡検査、前立腺がんではPSA測定後陽性の方は泌尿器科へ紹介、乳がんではマンモグラフィーと超音波検査、子宮がん・卵巣がんでは骨盤部CT検査とCA125採血後、院内の婦人科へ紹介、という対応を取っております。

結果の考察と検証

西伯病院内受診912例のAICS®の各がん種の評価結果は、表1となります。南部町の死亡原因として最も高い胃がん、肺がんにランクCが高い結果となり、また、どれかひとつのがん種でランクCであった方を集計すると、317例(35%)でした。また、年齢別にAICS評価結果をみると(表2)、ランクCは40代の35%を除くと、年齢が高齢化するとともに徐々に高率となる傾向になっており、年齢別のがんの有病率と相関しています。このことから、AICS®でランクCであった方が精密検査を受診することにより早期がんの発見が可能になることが示唆されます。

(表1) がん種別AICS評価結果<当院受診例>
         n(例) ランクA ランクB ランクC
胃がん       912  489    227   196  (22%)
肺がん       912  625    185   102  (11%)
大腸がん      912  708    146   58  (6%)
前立腺がん     414  239    113   62  (15%)
乳がん       498  340    95   63  (13%)
子宮がん・卵巣がん 498  355    98   45  (9%)
計        4,146  2,756    864   526  (13%)

がん種別AICS評価結果<集団検診例>
         n(例) ランクA ランクB ランクC
胃がん       442  202   133   107  (24%)
肺がん       442  274   107   61  (14%)
大腸がん      442  297   104   41  (9%)
前立腺がん     185  106    46   33  (18%)
乳がん       257  148    72   37  (15%)
子宮がん・卵巣がん 257  161    69   27  (11%)
計        2,025 1,188   531   306  (15%)

がん種別AICS評価結果<町外症例>
         n(例) ランクA ランクB ランクC
胃がん       175  101    40   34  (19%)
肺がん       175  118    43   14  (8%)
大腸がん      175  134    29   12  (7%)
前立腺がん     66   40    19    7  (11%)
乳がん       109  79    25    5  (5%)
子宮がん・卵巣がん 109  75     27    7  (6%)
計        809  547    183   79  (10%)

(表2) 年齢別AICS評価結果
年齢(歳)     n(例) ランクA ランクB ランクC
40~49      105   33    35   37   (35%)
50~59      172   73    59   40   (23%)
60~69      363  119   121   123   (34%)
70~79      221   58    69   94   (43%)
80~      51   14    14    23   (45%)
計        912  297   298   317   (35%)

AICS®を受診した1,529名のうち、ランクCだった方で精密検査を受診された結果では、早期胃がん3例、進行胃がん1例、早期大腸がん1例、前立腺がん1例の計6例のがんが発見されました。がん発見例の特徴は、同一症例で複数のがんにランクCが付くことです。ランクCのつく数が多い群ほどがん発見率が高率となっており、ランクCが3個以上付く症例はがんの高危険群と考えられます。この現象はがんに罹患することによってがん種共通に変化するアミノ酸があることから説明されます。
また、胃がんではランクCの50~60例に1例の割合で胃がんが発見され、さらに胃がんの発生母地と考えられる高度な慢性胃炎が68%に認められており、早期胃がんの発見を念頭においたこれらの症例の追跡調査ならびにヘリコバクター・ピロリの検査、除菌が重要であると考えられます。肺がんの発見例はありませんが、肺腺がんの初期病変を多く含むGGOが16例に認められ、これら症例の今後の経過観察が重要であると考えます。さらに、大腸がんではランクCで大腸内視鏡を施行した40例中1例でがんが発見され、LSTを含むポリープも21例認められました。前立腺がんでは、ランクCでPSA検査を受けた60例中PSAが高値を示す症例は6例(10%)で、そのうち1例でがんが発見されました。乳がん、子宮がん・卵巣がんでは要再検となる症例は見られましたが、がん種の発見には至っていません。
集団検診においてはAICS®でどれかひとつのがん種でランクCであった方が40%と極めて高値を示しましたが、これは通常検診を受けていない方が、AICS®の採血検査が簡便であることから受診されたためとも考えられます。現在、AICS®がランクCで精密検査を受けていない方が約半数います。また、複数のがんにランクCがつく方も多いことから、今後、このようながんの危険性が高いと考えられる方を中心に精密検査の受診勧奨を行っていきたいと思っています。また、地域別、がん種別にランクCの頻度が異なることは、今後のがん検診のあり方を考える上で、AICS®はよい指標の一つになる可能性を示唆しています。

今後について

今後は症例数を増やし、ランクC症例の追跡調査を行うことにより、AICS®の意義をさらに検討するとともに、AICS®によってがんのリスクを知ることが、がん検診受診率向上につながるよう努めていきたいと考えています。

[ⅰ]鳥取県南部町の人口は11,568人、40歳以上のがん検診対象者は4,221人、高齢化率は31.1%であり、死亡原因の1位はがんであり、年間50名の方が亡くなっています。国保医療費の約4割を占めていますが、がん検診受診率は約30%であり、町議会はがん検診を中心としたがん対策を本格的に始めることを満場一致で採択しました。(がん征圧宣言)
また、鳥取県は地域活性化総合特区計画を進めており、その中に、ライフサイエンス事業として血中アミノ酸解析技術を用いたAICS®の導入を決定しています。

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神奈川県

医療機関数 約80施設
受診者数 約7,500例(平成27年9月~平成28年2月)
性別 男性45% 女性55%
年代 70歳以上      10%
40歳~69歳     80%
39歳以下      10%
職業 企業社員・団体職員  58%
主婦         29%
無職         12%
学生その他      1%
健診等の受診経験 定期受診・毎年受診         69%
過去一度もない、最近は受けていない 31%
AICS®受診後の健診等受診意向 86%
AICS®受診後ランクC判定
だった場合の精密検査受診意向
69%
AICS®継続受診意向 62

神奈川県では、超高齢社会の到来に備え、「未病の改善」と「最先端医療・最新技術の追求」という2つのアプローチを融合する「ヘルスケア・ニューフロンティア」の取組みを進めることにより、誰もが健康で長生きできる社会を目指しています。事業の一環として、優れた未病産業関連の商品やサービスを、神奈川県が「ME-BYO BRAND(ミ・ビョウ ブランド)」として認定しています。2015年8月にAICS®が「ME-BYO BRAND」に認定。未病市場創出促進事業の1つとして、2015年9月から2016年2月にかけてAICS®の受診を勧奨し、好評のうちに終了しました。
同事業では、AICS®受診者を対象にしたアンケートを実施。健診等を毎年、あるいは定期的に受診している人は69%だったのに対し、AICS®受診後、健診等の定期受診意向が86%に高まりました。
また、採血だけの非侵襲性・負担感の低さや、一度に複数のがんを検査できる利便性、膵臓がんが評価できる希少性などが評価され、主婦や働く現役世代(女性社員、中小企業社員など)が多く受診しました。AICS®受診後にランクCと判定された場合の精密検査受診意向も、約7割と高い結果が得られました。
採血だけで複数のがんについて、現在がんである可能性を評価できるAICS®は、意識や行動変容のきっかけになるものと推察されます。

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